次にラズロが目を覚ましたのは、自室の中だった。
 波の音は遠く、あれだけ美しいと感じた空も今は見えない。穏やかな揺れだけが、名残のようにラズロをゆすぶっていた。机の上に置かれたランプが、仄かな光でもって室内を照らしている。

「起きたのか」

 静かな声が部屋の隅から響く。頭を動かすのが億劫で、ラズロは目だけで声の行方を追った。部屋の壁に、炎と同じように揺れる大きな影を見つける。声の主自体は、角度が悪いのか見えない。それでもラズロにはそれが誰だかわかった。

「テッド」

 名前を呼ぶと気配が動いた。返事は返らない。沈黙が続くなか、ラズロは次第にまぶたが重くなっていた。眠るつもりはなかったが、力を抜くつもりで目を閉じる。しばらくそのままでいると、少しの足音と共に静かな扉の音が聞こえた。そして、遠ざかる足音。ラズロは一人取り残された。

 打ち寄せてくる、暖かな暗闇。